南の方角へ視線を向けながら、小さく息を吐いた。
「実を言うと、魔界へ向かおうと考えていたのですが……あの門番の謎かけがひねくれていまして。結局、試練には不合格となってしまったのです」
陽光を背に受けて落ちた柔らかな影の中、ねっとりとした、まるで爬虫類のような鋭い気配が間近に迫った。楽しげな笑みの中に隠しきれないトリックスターの粘着質な湿度が混じり、抗いがたい共犯の誘惑として頭上から重くのしかかってくる。
「あら、落ちてしまったのね。それなら、私が少しばかり手助けできるかもしれないわ。実は私、あの門を少々ズルをして通り抜けたのよ」
「ズル、ですか? それはどういう……」
「簡単なことよ。あの門番を騙したの。ずっとあの暗がりに引きこもっている世間知らずだから、知性の試練で適当な作り話をでっち上げたら、あっさりと合格してしまったわ。でも、どうやら嘘がバレたみたいで、私を連れ戻そうと躍起になっているのよ。そこで、あなたの力を貸してほしいの」
「ええ、私にできることでしたら……」
「私、もうあの門番とは関わりたくないの。だから、私の代わりに魔界へ帰ってくれないかしら? あなた、なかなか面白そうだし、どうしても魔界に行きたいというなら協力してあげる。強力な変身魔法であなたを私の姿に変えるから、しばらくの間、私のフリをして帰還してほしいのよ。門を通ってもすぐには解けないから、心配はいらないわ」